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火災保険の基本知識

「水」による被害は保険でどこまでカバーされるのか

平野 敦之平野 敦之

2019/10/24

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イメージ/123RF

火災保険の水災補償とは?

火災保険における水災補償とは、一般的に「台風、暴風雨、豪雨等による洪水・融雪洪水・高潮・土砂崩れ・落石等」のことをいいます。床上浸水とだけ覚えているとカバーされる範囲を間違えるので注意してください。

同じ水による損害でも漏水や津波、雨漏りなどは別になります。
・漏 水:火災保険の「水濡れ」で補償(もしくは加害者からの損害賠償)
・津 波:「地震保険」で補償
・雨漏り:原則として火災保険の支払い対象外

一般的に水災の補償では、保険金の支払いに次の条件が設定されています。

<火災保険の水災補償の保険金支払い条件の例>
・再調達価額の30%以上の損害
・床上浸水、地盤面から45㎝超の浸水などが発生した結果、保険の対象に損害が生じた

例えば、一戸建て住宅で床下浸水などになった場合は保険金の支払い対象になりません。

火災保険の水災補償の特徴

水災の補償は、火災保険の商品によって保険金の支払方法がいくつか設定されていることもポイントです。

実際の損害について保険金額を上限に実際の損害をカバーするケースは分かりやすいのですが(実損型)、損害の程度によって保険金の支払いを定率にしていることもあります(定率型)。

水災補償の保険金支払い例

定率型の支払いをする場合には、上記のように損害の程度によって支払い額を一定の率になっています。実際の損害額がそのまま補償されるわけではありません。また、水災で建物に再築が必要な場合でも、損害額などの70%までしか補償しない場合もあるのです。

水災補償は火災保険の他の補償と異なり、必要かどうかが比較的はっきりしています。例えば、都心部で高層マンションの20階に住んでいれば、自分の居住部分に床上浸水などは想定しにくいため、水災補償を除外するという選択が可能です。

最近の火災保険は補償を選ぶタイプのものが主流です。水災の補償は、取り外し(もしくは補償を選択しない)することがほとんどの火災保険で可能です。また、火災保険全体に占める保険料の割合も比較的高いため、水災を外すことが可能なら保険料の節約効果が高くなります。

高層マンションの上階に居住している場合や居住物件が高台などにある場合では、水災を付けないことも検討してみましょう。但し、高台でも周囲より地盤が低く床上浸水する可能がある、川はないが山がある(土砂崩れも対象のため)など住まいの周囲の状況はハザードマップなどをみて必ず確認してください。

参考:国土交通省 ハザードマップポータルサイト 
https://disaportal.gsi.go.jp/

次ページ ▶︎ | 古いタイプと新しいタイプの水災の補償の違い

古いタイプと新しいタイプの水災の補償の違い

火災保険が自由化されて以降は、各社さまざまな商品を販売していますが、その前は各社共通した火災保険を取り扱っていました。いまの火災保険とは補償内容が同じではなく、水災についても違いがあります。

・住宅火災保険:水災は対象外
・住宅総合保険:水災は補償されるが定率払い。

※上記いずれの火災保険も現在契約があるなら、保険金額は再調達価額ではなく時価額で契約されている

このように定率型で補償されること、また保険金額が時価額での評価になるため全壊などした場合は同じ規模の建物が再築できないのです。高齢な人ほど加入している可能性が高いので注意してください。

共済の水災の補償

住まいの補償は火災保険だけでなく、火災共済もあります。共済にも大小さまざまな組織がありますが、県民共済やこくみん共済coop(全労済)、JA共済などはよく耳にする共済でしょう。

火災共済は、共済によって商品性がかなり異なります。共済ごとに損害の原因(火災、風災、水災など)によって、カバーされる金額の上限が違うことがあるのが特徴です。また選択するプランによっても水災で補償される金額が変わることもあります。

・どこの損保の火災保険に加入しているか
・古いタイプの火災保険か、各社ごとの新しいタイプの火災保険か
・火災保険か火災共済か

契約先や契約時期によって、水災にかかる補償も違いがあると考えてください。

次ページ ▶︎ | 火災保険の見直しと水災補償のポイント、注意点 

火災保険の見直しと水災補償のポイント、注意点

水災のリスクが高い人で現在の契約内容で補償が不足する人ほど、火災保険の見直しなどを検討した方がいいでしょう。但し、火災保険は自然災害の増加や水濡れ事故の増加などを背景に保険料は全国平均で上昇傾向にあります。また現在は火災保険の長期契約は10年が最長です。

住宅ローンの期間に合わせて35年契約などの超長期火災保険に加入した人は、保険料率や長期契約による割引の面で負担が重くなる可能性もあります。保険料負担と補償の両面から検討することが重要ですので慎重に検討するようにしてください。

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この記事を書いた人

平野FP事務所 代表 CFP ®認定者、1級FP技能士、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

東京都出身。証券会社、損害保険会社を経て実務経験を積んだ後に1998年から独立して活動をはじめてFP歴20年以上。また相談業務を受けながら、中小企業の支援にも力を入れている。行政機関や大学での非常勤講師、企業研修などセミナーや講演も多数。メディアでの執筆記事も多く、WEBに公開されているマネー記事は550本以上。2016年にお金の情報メディア「Mylife Money Online」の運営を開始。主な著書に「いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)」がある。誰もが自分らしい人生を安心して豊かに過ごすため、「お金の当たり前を、当たり前に。」をモットーに活動中。「Mylife Money Online」のURLはコチラ→ http://mylifemoney.jp

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